2009年4月18日土曜日

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫著、光文社)を読む。

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』

読む前も、読み始めてからも科学の本かと思い込んでいた。「飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない」というプロローグで始まるので、科学的に常識と思われていることの謎について解説するのだろうと。

しかし、定説の例として、「絶対に潰れないと思われていた山一證券があっという間に潰れた」が挙げらるあたりから、トンデモ本!?が頭をよぎる。だが、そのまま読み続けていくうちに、これは科学の本ではなく、科学史の本であることに気づく。

科学とは、その時代、そのときの常識によって変化するものであり、過去に正しくても現代では過ちであるものがある。それと同じように、現代は正しくても未来では過ちになる可能性もある。よって、絶対正しいものはなく、物事は色々な角度から見たり考えなくてはならないという。

ふと思ったのは、これは宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の第四次稿で削除された、列車の中で語られていることと同じであるということ。

「いいかい、これは地理と歴史の辞典だよ。この本のこの頁はね、紀元前二千二百年の地理と歴史が書いてある。よくごらん、紀元前二千二百年のことでないよ、紀元前二千二百年のころにみんなが考えていた地理と歴史というものが書いてある。だからこの頁一つが一冊の地歴の本にあたるんだ。いいかい、そしてこの中に書いてあることは紀元前二千二百年ころにはたいてい本当だ。さがすと証拠もぞくぞく出ている。けれどもそれが少しどうかなとこう考えだしてごらん、そら、それは次の頁だよ。紀元前一千年。だいぶ、地理も歴史も変わってるだろう。このときにはこうなのだ。変な顔をしてはいけない。ぼくたちはぼくたちのからだだって考えだって、天の川だって汽車だって歴史だって、ただそう感じているのなんだから、そらごらん、ぼくといっしょにすこしこころもちをしずかにしてごらん」宮沢賢治『銀河鉄道の夜』)

科学とは時代によって変わることがあり、ゆえに絶対というものはないし、さまざまな仮説を検討しなければならないということではないだろうか。また、それは科学だけでなく、政治、経済にも当てはまるということ。

まさかこの本を読んでいて宮沢賢治のことを思い出すとは思わなかったが、科学史的視点から見た考え方というものが理解できたと思う。

海外出張などには関係なく読んでみた本でした。

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