2011年2月23日水曜日

『2020年、日本が破綻する日』

図書館で借りた、『2020年、日本が破綻する日 危機脱却の再生プラン』(小黒一正著、日本経済新聞出版社)を読む。

きっかけは、『日本は破産しない!』を読んであまりにも疑問だらけだったので、ならば破産すると主張している本を読んでみようと思ったから。その中で一番まともそうだったのが本書。

『2020年、日本が破綻する日 危機脱却の再生プラン』

著者は一橋大学経済研究所世代間問題研究機構准教授で、専門は世代間格差について。よって、本書も世代間の社会保障の格差を中心に述べられている。

銀行や生保は大量の国債を購入しているが、その資金は個人が預けた預金であり、支払っている生命保険代である。よって、総貯蓄額が国債消化の上限となる。しかし、国債発行額は増え続けており、さらに高齢化により預金を取り崩しつつあるので貯蓄額は減りつつある。今のペースで国債発行額が増えていくと2020年に国債発行額が貯蓄額を突破するので、そのときに国債が消化できなくなり破綻する恐れがあるという。

他国との比較でも、25年後の財政破綻リスクはアメリカやイギリスが5%に対し、日本は30%と突出しており、さらにこれは基本的財政収支はゼロをもとに算出しており、2010年度のような予算が今後も継続した場合には71%にも達すると警告する。

現在、国の総予算207兆円の4割は借金返済に使われており、これが社会保障などを圧迫して将来の人的投資などが行えない状況になりつつある。もはや増税は不可避であるが、もし増税するときは段階的に行うのではなく、一気に行ったほうがトータルの影響は少なくなるらしい。また、景気が回復するまでは増税は行うべきではないという意見もあるが、これは財政があまり深刻でないときのことであり、もはや猶予はない。

著者は、社会保障費を確保するための増税(消費税は約20%)、社会保障の世代間格差をなくすため賦課方式から積み立て方式に切り替え、これらを監視する世代間公平委員会の創設を提言している。

社会保障費は毎年1兆円ずつ増加しており、今のペースでは現在よりも最大31兆円増加する。『日本は破綻しない!』では、国債の引き受け先がなければ日銀が買えばいいのだし、インフレになれば円安になるから良いとしていた。本書ではインフレについて述べているのはわずか一行しかなく、積み立て方式の場合、インフレになると目減りするかもしれないが金利が上昇するので目減り防止になるのと、借金も目減りするので公的債務も削減できるとしているだけだ。しかしながら、円安になって景気が回復しても、もはや社会保障費の増加分を賄うことは不可能なことが分かる。

著者の提言が正しいかどうかはわからない。しかしながら、危機的といいながら何ら政策を打ち出せない政治家だし、もし政策を打ち出したとしても増税を嫌がって受け入れない国民なので、現状維持でさらに悪化していくだけではないだろうか。

なお、論点は世代間格差のない社会保障の実現であり、現在ある借金をどうやって返済していくかについては言及していない。

本書を読むと日本に将来はあるのか本当に暗くなってしまう。中曽根元首相も本書を絶賛しているらしい。しかし、彼がもし首相在任中に本書を読んでいたとしても、政策は打ち出せなかったのではないだろうか。

『日本は破綻しない!』とは比べ物にならないくらいの良著だと思う。久々にいい本を読んだが後味は最悪であった。


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