2011年2月8日火曜日

『不思議の国サウジアラビア』

ブックオフで105円で買った、『不思議の国サウジアラビア パラドクス-パラダイス』(竹内節子著、文芸春秋)を読む。ニャチャンビーチ用二冊目です。

『不思議の国サウジアラビア パラドクス-パラダイス』

ここ数年、中東に行っているのでムスリム社会には注意を払っているが、その中でもサウジアラビアはイスラム世界の大国なので非常に興味がある。しかしながら個人で旅行するのは難しく(出来なくはないが手続きが面倒)、視察と称しての商用渡航も受け入れ先がなければやはり難しい。そんなサウジアラビアでで生活している人のこととなると、どんな日常を送っているのか全くわからない。というわけで読んでみたのが本書。

以前、中東ビジネスをしていた人の本は読んだが、生活していた人の本はなかったので、より普通の日常世界が知れて面白い。


「あるサウジ女性は、二十代初めの娘二人が毎月新しいアバヤを何着も買うのにうんざりして、もう着ないものを外国人の友人にどんどん回している」


「外でのアバヤとヴェールの着用が外国人女性にも強制されているのにもかかわらず、アラブ系でない外国人男性がサウジ・スタイルで歩くのは、禁止されていないまでも快く思われないことだ」


「(女性は)結婚して何年経っても夫の兄弟の顔を見たことがない女性はたくさんいる」


「(サウジでは)フランス人はもともと不まじめで堕落しているとの評判なのだが、裕福なサウジ人たちはしょっちゅうパリに旅行している。シャンゼリゼのあるカフェテラスでは、サウジ人たちが定期的に娘たちを座らせて、花婿候補に前の通りを歩かせ顔を見せる集団見合いをやっているという噂もある。その席に日本人観光客などが座っていると金を出して席を移ってもらうのだそうだ」


思ったとおりだというのもあれば、嘘でしょという話もあり興味深い。

著者の義弟(フランス人)が雇っているインド人運転手は24時間契約で給料は六万円ほど。しかしそのお金でインドで妻子を養っている。サウジ人に雇われるとその数分の一が相場ということで、2~3万円となり、それだったら誰もが家事はしなくなる。

また、サウジでは女性は運転できない。しかしそれに反抗する女性達もいて、1990年末に47人のサウジ人女性がスーパーの駐車場に集まって、車を動かして一斉に抗議行動を行った。すぐに警察に鎮圧されたが、女性達はほとんど制裁を加えなれなかった。なぜならば女性は基本的に未成年者と同じく責任がなく、責任は保護監督義務のある父親や夫に問われた。この女性達の夫はみな職を失い、五年間の出国停止処分を受けた。しかし夫達はそうなることを承知で認めたもの。裕福がゆえに欧米に留学する人は多く、リベラルな考えを持っている人は多い。

しかしながら、運転できなくても女性がお抱えの外国人運転手を持っていることもあり、女性が乗る車を選ぶのは女性ということをメーカーも気づき始め、女性専用の車のショールームも出来始めているらしい。

王族は約二万人いて、彼らだけでサウジのGDPの1/3を消費しているらしい。さっそくGDPを調べてみたが、2009年の名目GDP総額は3,757億6,640万ドル。そのうちの1/3ということは、約1,253億ドル。これを二万人で割ると、一人当たり627万ドル、1ドル85円とすれば約5億3,300万円となる。王族といっても直系から傍系まで様々だと思うので、上はビリオネア、下はそれでも数千万円は使っているのではないだろうか。

著者は兄がイスラム思想の研究者で、さらにフランス人の義弟がフランス系保険会社の中東ジェネラル・マネージャーとしてサウジに赴任したことから興味を持ったのが発端。その義弟の妻は、当初はサウジに行くのは嫌だったらしいが、いまではこのまま居続けてもいいと思っているらしい。何でも揃っていて、身の回りは全てメイドがやってくれる。また、制限された世界だからこそ他国人同士は非常に仲が良く、親密な付き合いになるらしい。

また、少年時代の大半をサウジで過ごしたフランス人青年は、サウジ得たものは「他者の尊重」と言う。さらに、いままで宗教に関心がなかった人たちもキリスト教など身近な宗教をより意識するようになるとのこと。自分達の世界とはあまりにも異なるからこそ自分達の存在、行いが彼らを通して鏡のように映ってしまうのではないだろうか。

出張ベースで中東を訪れて分かった気になっていたが、奥は深く、まだまだ知らない世界があることを知った一冊。というわけで、今年も中東出張あるといいな・・・




0 件のコメント: