『ラテに感謝!』
以前なにかのWebで、エリートサラリーマンがリストラされてスターバックスで働き始めたら人生について学んだ云々という記事を読んだことがあり、それが書籍になっていたのを新聞で知ったので読んでみた。
筆者は大手広告代理店の幹部だったが、自分が引き上げた女性社員によってリストラを宣告される。その後独立してマーケティング会社を起こすが徐々に立ち行かなくなり、どうしようもなくなって郷愁に駆られて幼いころ生まれた家を見にいったついでに近くのスタバで寄ったところ、求人に来たと勘違いされて声をかけられたことからスタバで働き始めるというもの。
日本ではエリートサラリーマンがどん底に突き落とされ失意の底でスタバと出会うという売り方をしており、副題は「転落エリートの私を救った世界最高の仕事」となっている。しかし、原題は『How Starbucks Saved My Life』で、副題は『 A Son of Privilege Learns to Live Like Everyone Else』と続く。訳は「特権階級の息子が他人と同じように生きることを学ぶ」といったものだが、本家はエリートサラリーマンの失意が主題ではなく、白人の裕福な男性がマイノリティー(黒人)と一緒に働きながら今までの間違った考えを改め直すことに重きを置かれている。
初めてスタバに働きにいく日には何でこんな仕事しなければならないんだろうと涙を流したり、仕事に慣れ始めたときにトイレを借りにきたホームレスを断ったことで注意を受けると、少しでも自分がやっていることに自信が持てるようになるとすぐに昔のように傲慢になってしまうと反省したり、店長に呼ばれると解雇されるのかと怯えたりする様子だけでなく、広告代理店時代に若い黒人女性をまともに取り合わなかったことを思い出すなど、自分がいかにマイノリティーを差別していたかを赤裸々に綴っている。
アメリカではベストセラーになっており、トム・ハンクスが映画化権を購入したことで話題にもなっている。著者は『How to Save Your Own Life』という二冊目も出しており、著述業に専念していると思いきや、相変わらずスターバックスでも働いているようです。
困難な状況下でも何かを学ぶ姿勢を身に着けることによって新しい道を切り開く、ということでしょうか。ちょっと前向きになれた一冊でした。
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