2010年1月27日水曜日

『生命保険のカラクリ』

図書館で借りた、『生命保険のカラクリ』(岩瀬大輔著、文集新書)を読む。日頃の買い物には細かくチェックするが、生命保険に関しては意外とルーズだったりするので勉強してみた。

『生命保険のカラクリ』

著者は、親会社に保険会社がいない独立系生命保険会社として74年ぶりに認可を受けた、ライフネット生命の副社長。まだ保険業界に染まっていないうちに、業界と世間のギャップの中身を多くの人に知ってもらうべく書いたのが本書。

そもそも日本の生命保険業界は世界の中で特殊な存在になっている。アメリカなどでは銀行、証券との垣根を越えた競争があったため生保が大きな力を持たなかったが、日本では規制により保護されていたことと、税優遇のメリットがあるため家計所得を取り込むことに成功した。行政の保護下、値引き競争などないので、生保レディを使った人海戦術でシェア拡大に励む。いつしか、契約者のための保険販売から自分達の経費をまかなうための保険販売へと変貌し、利益率の高い定期の死亡保障などの保険を積極的に売り込むようになる。そしてバブルだったこともあり、契約者獲得のために利率も高くしていたが、それが逆ザヤとなって首を絞めているのはご存知の通り。

生保もボランティアではないので儲けなくてはならないが、想像以上に支払った保険金が生保の経費として使われていることも判る。典型的な定期保険では、なんと全体の35~62%が生保の経費や利益に充てられている。すなわち日本の生保の収益性は高く、ゆえに海外の保険会社がこぞって日本市場に参入している。いまでは外資系生保が保険料収入に占めるシェアは三割にものぼっており、他の金融分野と異なり生保は外資系のシェアが高くなっている。ちなみに、日本人が一年間に払う保険料は40兆円であり、新車の販売額が約11兆円なので、いかに巨大かがわかる。

生保商品は三つしかなく、残された家族のための所得保障=死亡保障、病気・ケガによる入院・手術の保障=医療保険、将来に備える=貯蓄・年金と、分けて考えるべきであると説く。

まず、家族の年齢によって死亡保障の額は異なる。子供が小さければ保障は多いほうがいいし、成人になっていればいらない。よって終身ではなく、定期にして状況に応じて変化させるのが望ましい。

医療保険については、日本の場合は公的保険が厚いので、あくまでそれの補完として考えるべきである。例えば何百万円という医療費がかかったとしても、高額療養費制度を使えばひと月当たり約10万円で収まる。また、データから見れば年4~5万円払い込んで平均10~20万円の給付金をもらう程度のものなので、ならば自分で貯蓄して備えるという考え方もある。

貯蓄・年金については、バブル期の3~6%の利率であれば継続すべきであるが、いま現在は1%ぐらいしかないので、この低金利を固定化するのは得策ではなく、金利が上がってから加入するのがいい。

結局のところ、生保レディに言われるがままに入ってしまうのは危険で、いまならばインターネットや、複数の保険を扱う代理店で比較検討することが重要。自分が理解できないような特約は契約するべきではなく、本当に必要なものだけ、すなわちシンプルなものが一番いい。

保険こそ長期で続けるものなので、だからこそETFと同じくコストは重要である。生保レディを抱えていればそれだけコストがかかっていることになる。それを理解して日系生保に加入するのであればいいが、そうでなければコストが安い生保を選ぶべきであろう(経営的安全度はもちろん必須)。

保険とは自分に不幸があったときに支払われるものなので、あまり関わりたくない。だからこそ、その恐怖心から必要以上の特約を付けたり、高額の死亡保障を付けてしまいがちだと思う。やはり冷静に客観視して見直すことが重要だと思った。

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