『社長失格』
この本は出版された当初から知っていたし、その後テレビドラマ化されたことも知っていたが、元ベンチャー企業家というのが何となく軽い存在ように感じられ買うに至らなかった。今回、BOOK OFFで105円だったので、この値段ならいいやと買ってみた。
結論から言えば、もっと早く買っておけばと思った。ネットビジネス黎明期の躍動感が伝わってきて、一気に読めた。ビジネス書というよりも会社に青春をささげた熱い物語という感じ。
ただ、もしこのときの経営危機を乗り越えていてもハイパーネットは今も存在していただろうかと考えると、たぶん否だと思う。現在から過去を見ればどんなものでも陳腐に見えるし、ましてやそれがネットであればとてつもなく古い技術に感じてしまうのは理解している。検索のように極めて基本的な行為でシェアを取れればその行為は普遍的であるがゆえに、ある程度は会社は存続するだろう。ただし、それでも米ヤフーのようにいつかはさらなる技術を持った会社(Google)に追い抜かれてしまうこともある。
それが、その当時の最先端の技術を用いたものであれば、次から次へと登場してくるさらなる最先端の技術に対応した新しいアイデア、ビジネスモデルを常に提供していかなければならず、それが出来たのだろうかと考えたときに、やはりいつかはこの会社はなくなっていたと思った。
会社が倒産に至った経緯は色々とあるが、結局は仕事への情熱はあったがそれを客観的に見る眼がなかったのだと思う。経営者であれば冷静でなくてはならないと思うが、冷静であったのは追加投資をしなかった投資家であり、貸しはがしをした銀行であったのかもしれない。
著者は最後に自己破産してしまうが、ベンチャーに対して自己責任を求められてしまうところが日本のベンチャー投資の未熟さを表している。アメリカであればビジネスに対して投資が行われ、もし事業が失敗しても個人の責任とはならず、再度復活のチャンスはいくらでもある。これが個人の債務として圧し掛かってくれば、そんなリスクを犯してまで起業しようなどとは思えなくなってしまう。
現在、著者はコンサルティングとして活躍しているようであるが、そのまま埋もれずに新たなフィールドで活躍されているのは素晴らしい。益々のご活躍に期待です。
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