図書館で借りた、『価格.com 賢者の買い物 カカクコムの起承発展』(久保田正志著、日刊スポーツ社)を読む。
『価格.com 賢者の買い物』
買い物をするときの行動パターンとして、まずは価格コムの口コミで評判を元に購入機種を選定、次に量販店へ出かけて実物を触ってチェック、最後に再びカカクコムで最安値店から購入をしている。また、買い物をしないときでも口コミを読むためにアクセスすることもあり、見ているだけで楽しいサイトのひとつ。そんなサイトだが詳しいことは何も知らないので、読んでみた。
創業者はメルコに勤めており、秋葉原のザ・コンピュータ館担当の増設メモリの営業マン。メモリなんて規格はどこも一緒なので安いものが売れる。ということで、競合他社の価格を調べるのが日課だったが、ならばこの情報自体を売ったほうがいいのではと思い、メルコを一年で退社。
その後、ホームページを立ち上げ、ひたすら自宅で現金問屋の価格情報を入力する日々が続く。最初の一年は無収入だったが、ホームページを見て現金問屋に行く人が増えた頃から広告を取るようになると、一社5万円×20社で月収100万円を得るようになる。面白いのは、カカクコム(当時はまだ違うサイト名)は勝手に無料で価格情報を掲載していたので、「どうせなにもしなくても載せてくれるんだろ。だったら金出す必要ないだろ」と、広告は出さない会社があった。「このサイトを見れば日本一安い値段がある」というポリシーためにはそのような会社の価格情報も載せる必要がある。そこで、わざとそのような会社の掲載を忘れてしまうことにした。すると客が激減するのでカカクコムに抗議の電話をすると、そのときに「なにしろぼく一人でやっているもので、広告をくださってるお店を載せるだけで、限界なんです、おたくも広告をくださったら、指定席ですよ」と、強気の営業をすることができたこと。
その後は噂を聞いて他の店からも広告を出してくれと依頼が来るようになる。しかし、一人ではウェブページ制作に無理があるため、法人化して社員を雇うようになる。徐々に会社は成長し、買収を持ちかけられたことをきっかけに「束縛されない自由な時間を手に入れる」ために、以前投資を受けた投資ファンドに株を売却し引退してしまう。
二代目社長は価格コムに出資したことがある投資ファンドの社長。株式公開を目標に、個人のホームページから企業のホームページへと変貌を遂げさせていく。当初は広告収入だけだったが、掲載店へのサイトへジャンプしたクリック数に比例して課金するクリック課金制度へ移行。投資ファンドが単独で株式の大半を持っていると東証の上場規定に抵触するので、ITベンチャーのデジタルガレージが資本参加。そして上場するが、直後に不正アクセス事件が勃発し、存亡の危機に立たされるが、なんとか乗り切る。
三代目社長は、大企業になるには大企業で経験を積んだ人が良いということでデジタルガレージから出向していた元銀行員。電化製品だけだと年末年始、ゴールデンウィークなどのレジャーシーズンになるとサイトを見てくれないので、この谷を埋めるべく映画、旅行などのサイトも開設したり、かつては値崩れを引き起こすサイトとして嫌われ者だったが、メーカーも無視できないほど威力がある口コミを武器にタイアップ企画を打つなど収益源を広げている。
と、長々と要約を書いてしまったが、価格.comの歴史と収益構造を理解することが出来た。それにしても会社が成長する段階に応じて社長が入れ替わってきたことで上手く発展することができたし、それ以上に各社長があっさりと後進に道を譲ったことも偉いと思う。
サイトの内容も素晴らしいが、会社としてのあり方にも好感を持つことが出来た一冊だった。というわけで、久々の「普段使っているサービスに関する本を読む」シリーズ第六弾でした。
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