2011年3月28日月曜日

『日本破綻』

図書館で借りた、『日本破綻  「株・債券・円」のトリプル安が襲う』(藤巻健史、講談社)を読む。

『日本破綻  「株・債券・円」のトリプル安が襲う』

著者は元モルガン銀行東京支店長。ただし、ほとんどの人は著者が退職後に新聞や雑誌で登場するようになってから知ったと思う。著者の基本ポリシーは円安と徹底した市場化の二本柱。これらは以前から知っていたが、基本的には本著も同じことを説いている。

金利5%というと高金利で、そんなの有り得ないと思いがちだが、かつて金利は5~6%が普通で、1970年代に未曾有の低金利と言われたのが4.25%。ということは現在の0.3%というのは超低金利となる。一方、国の借金は900兆円に迫ろうとしている。長期金利1%ならば利払いは9兆円だが、金利が普通の状態に戻れば利払いは36~45兆円になる。しかしながら税収は37兆円しかないので、なんと利払いだけで赤字になる。

個人金融資産がたくさんあるから大丈夫という意見には、それは個人のものであって国のものではない。ならば没収されてもいいのかということになる。また、国債は大半が日本人が購入しているから大丈夫というのは、落語の花見酒と同じこと。お互いにお酒売って呑んで安く済んだと思っても、最後には酒を購入した借金だけが残る。

法人税を上げろという意見もあるが、他国と比べて高額な40%という税率だし、もしこれを二倍にしても現在の法人税収入10兆円が20兆円にしかならない。それ以前に、80%という法人税率になれば企業は海外に逃げてしまう。

なお、著者は常に円安にしろと言っているのではなく、いまの円高は市場に即しておらずこれを市場と釣り合った正しい状態(=円安)に戻し、そうすれば景気は回復するのでその間に財政を立て直し、その後の為替は市場に任せるとしている。さもなければ、日本は市場に見捨てられて暴力的事態を引き起こされるとする。

ただ、国債の利払いだけで税収を上回る恐れがあるのは同感というか恐怖だが、そのぐらいもはや破綻している状態なのに円安にして景気回復を図ってその間に財政立て直すというのは不可能ではないだろうかと思ってしまう。

また、日本が暴力的事態に見舞われた場合、他国へも影響を及ぼすと思うが、そのような時に元ディーラーとしてどのような対応をとるのか、すなわち市場はどのようなことが起こりうるのかということに対して言及がないのが物足りなかった。たぶん大変なことになると思うが。

というわけで、またしても国債シリーズでした。

それにしても表紙のインパクトが大きすぎる・・・




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