2009年4月24日金曜日

『アマゾンの秘密 世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか』

普段使っているサービスに関する本を読むシリーズ二冊目、『アマゾンの秘密 世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか』(松本晃一著、ダイヤモンド社)を読む


『アマゾンの秘密 世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか』

まさに「それは一本の電話から始まった」的な、知人から誘われてアマゾンジャパンの立ち上げに関わることになった著者の体験談。極秘に進められるサイトオープンから退社までの約二年間が綴られている。

著者はマーケティング担当として、カスタマーレビューこそが成功の要因と確信してキャンペーンを行う。キャンペーン期間中はレビューが集まったが、終了後も予想以上に集まる。これは、レビューを書くことを通じて、文章を書くこと自体の楽しさ、それがサイトに掲載されることの歓びをしってしまったからだとしている。これこそまさにブログと同じだと思った。へたくそな文章でも書き続けることで上手くなったような気になるし、読者はいないかもしれないけどネットに繋がっているので誰かが見ているかもしれないという実感があるからだ。(自戒を込めて)

面白いのは、amazonのマーケティングには顧客の性別、年齢などは一切関係なく、それらの項目すらないということ。必要なのは、その顧客がだれであるかということではなく、その顧客が何を買ったか、またはどの商品に興味を持ったかということらしい。そのような発想からリコメンデーション機能が生まれているのだと気づかされる。

後半はマーケティングや新規予算がほとんど通らなくなり、経費が節減されていく様子が何気なく書かれている。当時の本国のアマゾンは赤字で低迷を続けていた時期であったからだと思うが、それらの恨み節はなく淡々と語られている。

著者は当時も今もアマゾンに愛着を感じていて、それを表すエピソードを最後に披露している。「途方にくれた彼女は僕につぶやいた。「アマゾンって、何も教えてくれないんですね」。ため息まじりの彼女に思わず僕は相槌を打った。「うん。アマゾンは何も教えちゃくれないよ。でも、アマゾンではすべてを自分で学ぶことができる環境が整えられているから大丈夫だよ。意味わかるよね?」「はい。そうですね。うん、わかりました」。驚いたことに、彼女の表情は一転して明るくなっていた」。これは『若者はなぜ3年で辞めるのか?』のコメントと同じで、これこそ今の会社に求められていることではないだろうか。

また、社員を大人として扱う会社として次のように評している。「僕の知っている日本の企業の多くは、社員を言わば、できの悪い子供扱いすることが多く、たくさんの規則を作って、社員にいちいち反省を促していた。(中略)少なくともアマゾンでは、社員を子供としてではなく、ひとりの合理的な考えを持つ大人として扱い、それを前提に淡々と進めた。面白いことに人間は子供扱いされると子供のように振る舞うが、大人として扱われるといっぱしの大人としての行動しようとする。そういう環境で、個人個人が大人として努力するのは極めて自然でもあった」

アマゾンは外部に対しては徹底的な秘密主義だけど、社内は開放的らしい。その開放的というのは、会社は社員に対して場所を提供しているだけで、何もしない。だけど、その場所を利用して開放的な空間を社員が作り上げることが出来る環境、とでも言えるのではないだろうか。

子供として扱われても大人らしく振る舞い、そして誰に対しても開放的でありたいと感じた。でも会社からは解放されたいです・・・

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