2009年4月27日月曜日

『アマゾン・ドット・コムの光と影 』

普段使っているサービスに関する本を読むシリーズ三冊目。『アマゾン・ドット・コムの光と影』(横田増生著、情報センター出版局)を読む。

『アマゾン・ドット・コムの光と影』

アマゾンで注文すると、お急ぎ便でなくとも翌日に届くことが多い。前日の23時ぐらいまでに注文すれば当日届くこともある。そんなアマゾンの配送システムに興味を持ったので読んでみた。

内容は、著者が市川塩浜にあるアマゾンの配送センターで半年間アルバイトしたことと、取材から得た情報が書かれている。タイトルには「潜入ルポ」「~光と影」と書かれているが、そこまで大仰しくなく「アルバイト体験記」とでもいった感じ。

アマゾンの基幹とも言える物流センターではアマゾン、日通、アルバイトというヒエラルキーで成り立っているとか、取材を受け付けないアマゾンは秘密主義などとしているが、いまどきの会社は全てそうではないだろうか。ちょっと大げさな表現が目立った。副題で、「躍進するIT企業、階層化する労働現場」とあるが、アルバイトを徹底活用してコストを下げることは、残念ながら日本の全ての物流業に共通していることでアマゾンだけに限らない。

面白かった記述としては、「アマゾン本社の調査によると、商品にカスタマーレビューがつけば、その商品の売上が「約一万円」増えることにつながるという結果が出ているという。それもCDより、本の方がその影響力が大きいのだ」「物流センターから出荷された商品で返品されてくるのは一万件に一件、0.01%というほとんどないに等しい数字である」「複数の取材結果、アマゾンを利用する人の75%以上の世帯年収は、500万円を超えていることがわかった」。

このほかにも、アマゾンの実力を示すものとして、業界平均で30%後半に近い返品率が一ケタ台しかないとか、取次ぎを抜きにして出版社と直接取引きすることにより利益率を高めている、送料が無料になる1,500円以上だと売上が良いので出版社も1,500円以上の値付けをするようになっている、中古販売のマーケットプレイスは手数料だけなので利益率が高いなど。

アメリカでは再販売価格維持制度がないので安売りができる。そこで本国のアマゾンは既存の大手書店と対抗するために大幅な値引き販売をしなくてはならず、当初はなかなか利益が出せない構造だったらしい。ゆえに日本の再販制度はアマゾンにとって非常に有益なシステムになっている。規制は既存の産業を保護しているはずだが、時代とともに変化させなければ逆に毒になってしまうということではないだろうか。これはブックオフの隆盛にも繋がると思う。

2005年に発行されているが、当時はアマゾンジャパンの売上は500億円だったらしい。いま調べてみるとwikiでは約1,500億円と推定している。これは紀伊国屋書店が1,181億円(wiki)なので、もはや日本最大の書店になっているということだ。(ただし全てが書籍の売上ではないが)

物流現場は大変だと思うが、改めてアマゾンのパワーを感じさせられた。

0 件のコメント: