ブックオフで400円で買った、『目と耳と足を鍛える技術 初心者からプロまで役立つノンフィクション入門』(佐野眞一著、ちくまプリマー新書)を読む。
『目と耳と足を鍛える技術』
佐野眞一は好きな作家の一人なので買ってみた。ノンフィクションを一冊書き上げるのに何年もの時間と執念が必要だが、それ以上に取り上げられた人たちの人生と熱意のほうが面白いことに気づく。
「世間の眼? そんなん気にしとられへんわ。自分の人生や、人に左右されない。ヘンなこといわれたら、なんでアカの他人にごちゃごちゃいわれなあかんの、いうてやります。町会長はんもヘンなこといわさへん、いうて約束してくれはりました」(セプテンバー・セックス)
「ある年の正月早々、東京周辺百二十万世帯の水道からいやな臭いのする水が出て大騒ぎになった。タマネギの腐ったようななんともいえむいやな臭いだった。どんな物質がどこから混入したのか皆目見当がつかない。しかし、前田の鼻はそれすら見逃さなかった。「ほんのわずかだが取水源の川の水の臭いが残っている」というのである。前田の追跡行が始まった。ボートを仕立て、利根川をどこまでもさかのぼる。前田の鼻がつきとめた汚水源は、浄水場から利根川を百キロも上流にさかのぼった群馬県渋川のチクロ工場だった」(水の終わり)
料理人(書き手)の腕と、素材(対象者)の良さがかみ合ったとき、最高のノンフィクションが生まれるのであろう。
ところで、巻末にノンフィクションの名著100冊がリストアップされているが、猪瀬直樹の本は紹介されていない。『ミカドの肖像』が大宅賞を受賞したときの選考委員だった立花隆は、単なるデータの寄せ集めだとして大反対した、と聞いたことがある。佐野眞一も同じ理由から選んでいないのだろうか。ちょっと気になった。
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