2011年1月11日火曜日

『日本は破産しない!』

図書館で借りた、『日本は破産しない! 騙されるな! 「国債暴落で国家破産!」はトンデモ話だ!』(上念司著、宝島社)を読む。読むきっかけは、新聞広告に大きく出ていたから。

『日本は破産しない! 騙されるな! 「国債暴落で国家破産!」はトンデモ話だ!』

著者の主張は、日本はお金の供給量が少ないがゆえデフレと円高なので不況を引き起こしているというもの。よって、日銀が国債を引き受けて供給量を増やせば適度なインフレになり円も安くなるので、輸出が増えて、雇用も増えて、税収も増える。

また、日本は変動相場制だから国債が暴落するならば同時に円も下がる。そうすれば輸出が増えて海外で生産していた会社も国内生産に戻るから雇用が増える。よって変動相場制である限りは破綻しない。破綻したアルゼンチンは固定相場制だからであり、ギリシャもユーロに組み込まれているから通貨が値下がりせず危機に陥った。

それぞれの主張にはデータがあり、確かにそうかもしれないが、読んでいると違和感を感じざるを得なかった。冒頭に書店に並んでいる国家破産を煽るような本はトンデモ本とあるが、確かにそのとおりだと思う。しかし、それの論破の仕方がヒステリックで、読んでいてあまり好感が持てない。

円安に誘導すべきとしているが、財政が苦しいのは日本だけでなくアメリカもEUも同じ。日本だけが通貨安で財政再建を図れるとは思えない。その他の国が納得しないだろう。単なる為替ダンピングを引き起こすだけで、再び元のレートに戻ると思うのだが。

国の借金だけでなく資産にも着目すべきで、政府の負債は国民の資産でもあるというが(ゆえに負債といっても資産が含まれるから実際の負債は少ないということ)、その資産にもはやどれだけの価値があるのだろうか。かんぽの宿にしてもそうだが、簿価では高価格であっても実際に売りに出したらタダ同然という資産が大半ではないだろうか。

国から特殊法人への貸付は約500兆円あり、特殊法人を廃止すれば負債は500兆円減るともいう。それは埋蔵金と同じことだと思うが、単年度で黒字予算にならない限りは再び超債務国に戻ってしまうと思う。

最後に、デフレが終わらない限りは株式や外国債券への投資はリスクが高いので、これらは一定の割合に収めて、それ以外は国債を持つべきと薦めている。でも、いつどのタイミングでデフレが終わるのかはわからないし、デフレが終わってから株式等を買っても間に合わない。結局のところ、適切なポートフォリオで資産管理をするのが一番理に適っていると確信した。

本書を読んでも疑問だけが増えてしまった。国債関連は二冊目だが、『国債暴落』のほうが冷静に分析していていいと思う。もちろん国債については暴落など起こらないほうがいいと思うが、しかしながら分析不可能状態になりつつあるのは確かではないだろうか。






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